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大和ハウス工業が設計・施工した商業施設が沈下、耐震性に重大懸念
2015年10月に発覚した横浜のマンション「パークシティLaLa横浜」の杭施工データ改ざん事件。同じく横浜市内の「パークスクエア三ツ沢公園」では杭施工データ偽装とされる傾斜が発覚。どちらも建て替えという結論になりまだ記憶に新しいなか今度は、大和ハウス工業が設計・施工して2023年5月に開業した静岡県掛川市内の商業施設「ミソラタウン掛川」で地盤が最大14cm沈下し、今年11月7日から施設の使用停止を余儀なくされている事態になっています。大和ハウス工業の調査では、現時点で5本の基礎杭が支持地盤に到達していないことが明らかになったとしていますが今後の調査でさらに増える恐れがあります。建築主のフジ都市開発(静岡市)は調査後の建物解体や建て替え、大和ハウス工業への賠償請求を検討しているということです。
商業施設「ミソラタウン掛川」はフジ都市開発が総事業費約30億円を投じ、23年5月に開業。A~Dの4棟から成り今回の問題はA棟で発覚したということです。A棟の基礎杭は7~12mで計72本あり大和ハウス工業は今年11月までに9本を調査。このうちの5本が支持層に2~8m到達していないことが判明したということです。同社は、未達が判明した杭の周囲にある5本も支持層に到達していない恐れがあると見ており同社は杭の調査を25年1月ごろまでに終える予定だということです。
異常がなかったB~D棟では通常通り営業を続けるが、A棟に入居していたスーパーやドラッグストアなどのテナント3者は休業・閉店を余儀なくされた。フジ都市開発とテナントとして入居する遠鉄ストア(浜松市)は、大和ハウス工業に対する損害賠償請求を検討しているということです。横浜の件で大きな社会問題になり建設業界も危機感をもって再発防止に取り組んでいると思われた中での今回の問題発覚です。
各業界大手企業で続く基礎杭偽装問題と免振ゴム偽装問題
2015年10月に発覚した「パークシティLaLa横浜」は事業主(デベロッパー)が三井不動産と明豊エンタープライズ、設計・施工は三井住友建設。「パークスクエア三ツ沢公園」は事業主が住友不動産、設計・施工は熊谷組。日本を代表する大手企業が名を連ねています。問題の杭は、旭化成建材が施工したDYNAWING工法の杭であり建設時に必要な地盤調査の一部をせずに別のデータを転用するなどして基礎工事を行い問題が発生した。横浜のマンションでのデータ偽装が発覚した後、旭化成建材は杭工事をした45都道府県の3040件について、施工報告書を調べて、約300件で杭のデータ偽装の疑いがあり、50人近くの現場責任者の関与が判明しました。
このような国内有数の大手デベロッパーやゼネコンが手掛けているにもかかわらず、偽装が防げず大きな社会問題になり、今回、再び国内有数の大手住宅総合企業である大和ハウス工業が設計・施工した建築物で問題が発生しました。「大手だから安心」という本質的な答えにならない漠然とした理由で信用することが実は非常に不確かな脆いものであることが改めて浮き彫りになりました。
今回の事件とは別に福岡の賃貸タワーマンション「カスタリア大濠ベイタワー」(地上30階、高さ97.67m)では2015年に東洋ゴム工業(現TOYO TIRE)によって検査データ偽装された免震ゴムが使用されていたことが発覚しその影響で現在解体中になっています。まだ築15年という物件での解体となりました。この件についてはTOYO TIREが免震偽装の責任を取って自らマンションを買い取るという異例のケースで終結しました。売り主は大和ハウスリート投資法人。
基礎杭問題が起きる要因と建設業界の問題点について
杭は構造物をささえる土台であり、この土台が揺らげば、その上の構造物は本来の機能を発揮することはできないことは誰が考えてもわかることです。
杭は地中に設置されるため、施工の品質を目で確認する事ができず、施工記録が品質確認のほとんど唯一の手段であるというのが実情です。この記録が改ざん・流用されてしまえば、元請ゼネコンの現場担当者では杭の工事業者から提出された施工記録から改ざん・流用を見つけ出すことは困難であると言われています。日本の地質は世界一複雑であるといわれます。基礎地盤の複雑さや場所による変化の激しさも同様であり、大きな構造物をつくる場合は、地質調査が義務付けられ、そのデータにより地質断面を想定し、杭基礎の場合は先端を設置する支持層を決定します。目に見えない地中のため支持層の想定深さと実際の深さに相当の誤差が生じることは避けられず想定する誤差量を大きく設定すれば、杭長は長くなり、原価上昇に直結します。経済性を考えれば、ぎりぎりの設計になりがちで、継杭などの設計変更せざるを得ないケースが生じてしまうリスクが内在しており不確定要素の大きい業務だということです。
建設業界はこれまでの価格競争と重層下請制度に加え近年は事業者側から一段と厳しいコスト削減と工期短縮の要求が付け加えられています。さらに、材料費の高騰に加え2024年4月からは改正労働基準法の施行で労働時間の規制強化等業界を取り巻く環境は厳しさを増しています。
建設現場では従来、人的な関係を含めた信頼関係と職人としてのプライドが品質を維持してきたものの近年の価格重視の下請け依存に傾斜した結果、丁寧な作業を心掛けようという意識が生まれにくくなる環境が出来上がってきています。
さらに厳しい工期厳守が要求されることが常で、建設工事の全工種にわたって、相当なプレッシャーになっています。特に先述した様に不確定要素の大きい地中を相手にする杭工事については、十分な地質データが求められるにもかかわらず、その調査さえ省略されている実態がおきているということです。仮に想定外の事が発生すれば場合によっては元請や発注者との変更協議が必要となるなど、工期が遅れ予算オーバーが発生します。工期遅延はペナルティーの対象になることもあることから余裕のない状態での杭施工が行われ今回のような問題が発生することになります。
単に建設業の偽装問題ではなく金融資本主義の歪が表面化している!
このように外から見えない「基礎工事」は施工にあたる場合、工程管理を徹底することが重要だと言えます。請負施工業者社員が直接作業を行うにしろ外注する場合にしろ、必ず管理技術者が現場に常駐し、施工記録を取ること。材料の搬入から施工記録の確認まで、工事の可視化に努め記録の保存を徹底することが重要であると考えます。先述した様に支持層の想定深さと実際の深さに相当の誤差が生じることは避けられないことを理解したうえで支持層の確認は埋設時の施工記録を確実にとることを徹底することが重要だと考えます。
一方建設業に従事する労働者の高齢化と減少も深刻であり実際に建設労働者の減少には歯止めがかからず特に建設業は他産業と比べて高齢化が進んでおり全就業者数の中で55歳以上の就業者の占める割合は、全産業平均の31.5%に対して建設業は35.9%。29歳以下の就業者の占める割合は、全産業平均の16.4%に対して建設業は11.7%(日建連 建設業デジタルハンドブック)。現在の状況が続くようであれば、人手不足はますます深刻化することになります。
こうした状況のなか、2024年4月からは改正労働基準法の施行で、時間外労働の上限規制の適用が始まり労働時間圧縮のしわ寄せが、施工品質に及ぶリスクが懸念されています。
政府はこうした事態をうけ人手不足を補うために外国人労働者の受け入れを拡大する方向で進めていますが経験の浅い職人を集めても、問題の本質である多重下請け構造や工期短縮の問題、労働者の処遇改善及び施工不良を防ぐための教育や意識が各現場で行き届いていなければ、根本的な解決にはならないと思われます。
こうした問題が発生する度に思うのは日本の経済システムは原点に戻り再構築する時期に来ているのではないかと感じています。少しでも安く、少しでも早く、ということが前面に出て、土台の安全という、品質上の最大要素を軽視してまで営利を追求しなければいけない構造は正常ではありません。行き過ぎた金融資本主義の拡大がこうした背景を生む土壌になっているのではないかと思います。
修繕積立金算の値上がりに対応できない管理御組合が増加中!
修繕積立金の値上げで合意形成がスムーズに行かないケースが増加しています。新築時では低く抑えれていた積立金がその後、2倍又は3倍以上の変更を管理会社から提案されているというケースも見受けられます。今年6月に示された修繕積立金の額を設定する際のガイドラインでは、将来にわたって安定的な修繕積立金の積立てを確保する観点からは、「均等積立方式」が望ましい方式とされています。しかし現実は、現在販売されているマンションでもほぼ全ての物件が「段階増額積立方式」を採用しています。一昨年から始まった「管理計画認定制度」や「マンション管理適正評価制度」では、修繕積立金不足により適切な時期に工事ができないマンションが増加しないように、認定または評価に一定の基準を設定しています。高経年マンションでは、その基準をクリアーするためには、現状の修繕積立金を2倍、3倍以上値上げしなければならないケースが発生することになり組合員の同意が得られず値上げができないマンションが増加しています。そこで今年6月のガイドラインでは以下のような段階増額積立方式における適切な引上げ幅の上限に対する考え方が示されました。
≪修繕積立金の積立方法についての指針≫
国土交通省は、マンションの修繕に備えて所有者が毎月支払う積立金について、引き上げ幅の上限を示しました。急激な引き上げで支払いが滞らないよう、当初と比べて最大でも約1.8倍に抑えるよう提案。修繕資金を安定的に確保するため、計画的な積み立てを促すものです。
段階増額積立方式とは
新築当初は修繕積立金の金額を低く設定しておき、段階的に増額していく方式です。従ってこの方式ではその都度、総会で金額変更の決議と同意を求める必要が生じてきます。
均等積立方式とは
将来予想される修繕積立金の総額を長期修繕計画の期間で割り、新築当初から一定額を徴収していく方式です。
この方式は建物や設備の維持管理に向け、将来的に必要となる修繕にかかる資金を均等に負担していこうという考え方に基づいています。
また、将来の目標金額に向かって的確に管理が行えるため、金額変更に伴う合意形成を繰り返し行う必要もないことから、国土交通省が推奨している徴収方式です。
そもそも修繕積立金のベースとなるものが長期修繕計画でありこの長期修繕計画自体が妥当なものなのか?現実的なものなのか?といった検証をおこなっている管理組合はどの程度あるでしょうか?割合でいうと非常に少ないのではと感じています。また自主管理組合のなかにはそもそも長期修繕計画を作成していないケース、管理会社に委託しているが竣工時の当時のままのものであったり10年以上見直しがされていないものなど不適正なものの割合のほうが多いのではないでしょうか?実際に竣工時に作成された長期修繕計画を基に管理会社が2倍以上の値上げを総会に上程しようとしたケースを目にしたことが複数回あります。そこで検証にも使えるコスパが高いと思うツールについて利用方法等を解説したいと思います。以前ご紹介した住宅金融支援機構が開発した無料で作成できるシステムと比較して国土交通省のガイドラインに沿った様式と編集が可能なエクセルデーターが利用できること等が特徴です。
コスパが高い長期修繕計画・修繕積立金算出作成について
ご存知の管理組合員の方もいると思いますが公益財団法人マンション管理センターでは、マンション管理組合の皆様が現在の長期修繕計画や修繕積立金の額を見直しする際やその内容が適切かチェックする際に、比較検討の目安(セカンドオピニオン)として利用できる「長期修繕計画」の作成とこれに基づく「修繕積立金の額」を算出するサービスを行っています。そこで今回は、センターサイトの該当ページを引用しながら簡単なコメントを加え説明させていただきます。すこし長くなりますが興味のある方は、是非参考にしてください。
補足:この長期修繕計画は、必要な修繕項目全てを周期ごとに機械的に計算されたものです。例えば玄関ドアを周期で全て交換同じくベランダ手摺をすべて交換、給排水管も周期で更新等、現実的には多くの管理組合で修正が必要となると思われます。あくまで30年間の全体像を確認するという事に重点をおくと良いと思います。
↓まずこのサービスを利用していただける事例として以下の記載があります。現状の見直しや参考資料として活用できることになっていますが自主管理等で長期修繕計画を作成されていないケースでもひな形として活用できることも可能だと考えます。実際複数の自主管理組合様に提案してまいりました。ただこれをそのまま使うことは現実的でない項目もあり専門家のチエック・修正等が必要になってきます。
①このサービスを利用していただける事例
↓次に長期修繕計画の内容については以下のように記載されています。紙媒体とCDーROMがセットになっています。実はこのCD-ROMは実情に応じて編集が可能になっています。実際に実務レベルで対応するには知識や経験、編集能力も必要ですが費用対効果は高いと思います。
②このサービスによる長期修繕計画の内容
このサービスにより作成する長期修繕計画は、国土交通省において策定された「長期修繕計画標準様式」を用い、「長期修繕計画作成ガイドライン」及び「同コメント」に沿った内容としています。ただし、次の事項が異なっています。
(2)次のファイルが保存されたCD-ROM
○(1)の報告書のPDFファイル
○(1)の報告書のうち、次のシートで構成するEXCELファイル
[様式第1号]マンションの建物・設備の概要等 | |
[様式第4-1号]長期修繕計画総括表 | |
[様式第4-2号]グラフ(長期修繕計画総括表の内容をグラフにしたもの) | |
[様式第4-3号]長期修繕計画表(推定修繕工事項目(小項目)別、年度別) | |
修繕項目毎の修繕時期及び金額を変更できる入力シート(*) |
(*)このシートは成果物(報告書)には含まれておりません。
このシートで変更した内容が[様式第4-1号]、[様式第4-2号]、[様式第4-3号]のシートに反映されますので、お客様で工事金額や工事時期を色々と変えて試算ができます。
↓次に利用にあたっての留意事項は以下のように記載されています。機械的に対応するため標準的なケースでの算出となっています。また単価については首都圏ベースで算出していますのでやはり修正等は必要になってくると思います。尚、超高層マンション、リゾートマンション、社宅、賃貸マンション等は、対応できません。
③ご利用にあたっての留意事項
対象とするマンションは、中高層、住宅専用の分譲マンションです。複合用途型マンションは、店舗・事務所等の規模が比較的小さいものについては対応が可能です。 なお、超高層マンション、リゾートマンション、社宅、賃貸マンション等は、対応できません。 | |
標準モデルとして、6階建、30戸、平均専有面積75㎡のファミリータイプのマンションを想定しています。 マンションの規模などが標準モデルと異なる場合は、概算の参考値となります。 | |
調査・診断を行っていませんので、建物・設備の個別性(新築時の施工程度、経年劣化の進行状況等)は考慮していません。 | |
推定修繕工事費について、将来の物価変動は考慮していません。また、単価は、首都圏を対象としたもので、地域等による差異は考慮していません。 | |
本計画については、計画期間(30年)の終期における推定修繕工事費の累計額を、修繕積立金の累計額が下回らないように計画しております。 | |
大規模修繕工事の予定年度において、修繕積立金の累計額が推定修繕工事費の累計額を一時的に下回るときは、その年度に一時金の負担、借入などの対応をとることが必要になります。 | |
作成した長期修繕計画は、作成日と管理組合の会計年度との関係から、最大1年間程度のずれが生じる場合があります。過去の実績をもとにモデル的に作成しますので、独自に計画されている修繕予定を反映することはできません。 | |
長期修繕計画の作成は1棟毎となります。1棟毎に「入力データ記入票」の提出が必要です。 複数の棟で構成される「団地型マンション」については、団地全体と棟毎の「入力データ記入票」の提出が必要です。 |
↓次に作成費用については以下のように記載されています。マンション管理センター登録管理組合やみらいネット登録管理組合では14,000円で作成が可能となっています。それ以外の管理組合については21,000円となっています。もちろん完全オーダーメイドではありませんがコスパは高いと思います。尚。各登録管理組合の内容については各自でお調べ下さい。下の表の項目に外部リンクがついています。
④作成費用
(1)マンション管理センター登録管理組合(外部リンク) | 2棟まで1棟毎に | 各14,000円 | (3棟目以降1棟毎に各9,000円) |
(2)マンションみらいネット登録管理組合(外部リンク) | 同 上 | 同 上 | 同 上 |
(1)(2)以外の管理組合 | 同 上 | 各21,000円 | ( 同 上 各13,000円) |
管理組合以外 | 同 上 | 各31,000円 | ( 同 上 各19,000円) |
(注)1棟:「入力データ記入票」1セットをいいます。
複数棟でも「入力データ記入票」1セットで提出する場合は1棟となります。
(実際の棟数とは必ずしも一致しません。)
↓最後に利用方法については以下のように記載されています。メールのみとなっていますのでパソコン及びオフィスソフト及びインターネット環境が必要となります。実はこの入力データー記入票が時間がかかかり骨が折れる作業に感じると思います。お手元に管理規約、パンフレット、竣工図書、過去の大規模修繕工事資料、今までの修繕履歴等が必要になってきます。この作業をいい加減にするとせっかくのコスパ最高も意味を成しません。私自身も何度もこの作業を行っていますが一般の管理組合員の方が行うには相当な根気が必要です。逆に言えばこの作業をクリアーすればあとは事務作業ですので一気に完了となります。まずは、どのような入力項目があるのかチエックをされてみてご検討されるのも良いと思います。
⑤ご利用方法
メールにてご依頼ください
入力データ記入票(EXCELファイル)」を入手する ホームページ(こちら)より、留意事項をご確認の上ダウンロードしてください。 《留意事項はこちら》(PDF)(外部リンク) 《ダウンロードはこちら》(EXCEL)(外部リンク) | |
「入力データ記入票」に必要事項を入力する 設計図書、分譲時パンフレット等で確認してご入力ください。※シートが2つありますのでご注意ください。 | |
「入力データ記入票」を添付したメールをセンターへ送信する 送信先アドレス choukei@mankan.or.jp(外部リンク) メールの表題は、「長計作成申込み(マンション名)」としてください。また、本文には、担当者(入力内容について問合せのできる方)名とその方に日中にご連絡可能な電話番号を必ずご記載ください。(メールでの問合せは行いませんので、ご了承ください。) | |
センターから長期修繕計画等が届く 2週間程度で長期修繕計画等と請求書が届きます。 | |
作成費の支払い 作成費を指定先の金融機関にお振込みください。 |
★ 「入力データ記入票」にご記入(入力)いただく内容
・専有部分の面積、建物・設備の概要、建物の形状、建物や設備の仕様、修繕の履歴など
(数値又は選択肢をご記入(入力)いただきます。)
ご不明な点は、以下の窓口にお問い合わせください。
問合せ先 技術部 電話番号 03(3222)1519
「管理会社による外部管理者方式」に交通省は法制化の方針を固める!
国土交通省は、近年増加している管理会社による外部管理者方式(第三者管理者方式)について、グループ会社などに修繕工事や清掃等を発注する場合、管理組合の総会で承認を得ることを義務付ける方針を固めたようです。通常の相場よりかなり割高な値段での発注を防ぐためで、2025年の通常国会への提出を目指すマンション管理適正化法などの改正案に盛り込む考えを示しました。
現時点では具体的な事はわかりませんが、違反した管理会社に対する監督処分も設ける方針で、違反行為を重ねるにつれて、「指示」「業務停止命令」「管理業の登録取り消し」と処分を重くする方向で検討しているようです。
通常マンション管理組合では、理事会承認事項を除き組合員(区分所有者)の中から選任された役員が理事会でどの業者にいくらで修繕や清掃を依頼するか協議し、理事会にて決議、総会に上程・承認という流れになります。しかしこのブログでも再三取り上げていますが一部の大手管理会社等が、「組合員の業務を軽減」というメリットを強調し理事会を廃止し管理会社が管理者に就任(通常管理会社の社員)するケースが増えています。しかしながら年間発注する修繕工事等で理事会で審議されることなく相場を大きく上回る金額でグループ会社に発注されるケースが近年増加しマスコミ等でも度々取り上げられてきました。市場経済は、契約自由の原則が優先されますが問題が浮き彫りになると法の整備という流れは今も昔も変わりません。
修繕工事・清掃等過度な高額発注を防止 管理組合の不利益回避へ
この理事会廃止型の管理会社による外部管理者方式は、修繕工事や清掃等を担う会社が同管理会社又は同一グループ会社の場合、管理会社=管理者は「所有者のため費用を抑える立場」と、「会社の利益を優先させて利益を最大限に追求する立場」で、利害関係が対立する「利益相反」が起きる可能性が高まります。このため、所有者に不利益が生じることを防ぐ措置が必要だと判断しての改正と考えます。
以前のブログでも記載しましたが国土交通省は、今年6月にマンション管理に関する指針を改訂しました。発注時に組合の承認を得ることのほか、チェック機能を持たせるため外部専門家らを「監事」として置くことや、管理組合の口座の印鑑は監事が持つことなどを定めています。今回の発表は、その流れに沿うもので管理組合の不利益が現実化する発注時の承認は特に重要だと判断し、法律に明記して義務化することで管理組合の不利益を防ぐ狙いがあります。この理事会廃止型の管理会社による管理者方式は現在も着実に増えています。出来るだけ早いうちの法整備更なる改正を進めていくことが望まれます。
管理会社の着服等不正が起きる問題の本質を理解することが重要!
マンション管理会社の不正についてのご相談・ご質問等が数件ありましたので今回は関連記事を掲載したいと思います。以前のブログでも記載しましたがマンション管理会社の行政処分は国土交通省ネガティブ情報等検索サイトで過去5年の行政処分業者を公表しています。サイトがわからないという声を頂きましたので記事最後にリンクを貼っておりますのでご確認ください。
毎年のように大手・中小管理会社問わず管理組合の財産着服等で国土交通省から処分が公表されています。令和6年度も現時点で以下の処分が公表されています。この問題を個々の管理会社の体質と結論づけるのは非常に危険です。多くの管理組合の運営に対する認識の低さ=管理会社に丸投げの構図がある限りどこの管理組合でも起こりえることなのです。もちろん公表されている管理会社でも適正に管理されている物件も多くあると思います。管理会社は営利を追求する民間の事業会社ですので基本的に管理組合とは利益相反関係にあります。管理組合側が任せきりであれば、管理会社は当然緊張感が無くなりこうした不正の温床になりかねません。
昨年、14管理組合被害総額 9億円以上の被害が出たビケンテクノの問題に関しては、現時点では国交省から行政処分が出ておりません。管理組合の皆様は、管理会社だけを一方的に非難するのではなく自分たちの資産を守るために出来ることを考え出来ることから取組むことが必要だと考えます。そのことは管理会社に一定の緊張感を与え被害を防ぐ結果に繋がることになります。今回公表された3ケースいずれも国土交通省の処分は「改善措置指示」という対応です。指示処分とは、「従業員に対する教育周知徹底を図ること及び業務体制の整備に努めること、その実施状況を報告すること」というものです。前回の関連記事に記載しましたが日本の管理会社への規制は限定的で甘すぎるために抑止力が弱く同様な事件が後を絶ちません。これらの現状を見れば自分達の資産は自分達で守るしか術はないことがおわかりいただけただけることと思います。
前回の関連記事はこちらをクリックしてご確認ください。
令和6年度国土交通省公表(11月13日現在)
改善措置指示
令和6年3月22日
関東地方整備局は、日本ハウジング(本社:東京都新宿区)が管理事務を受託している複数の管理組合において、管理組合財産を同社の従業員が窃取により毀損し、当該管理組合に損害を与えた。当事実は、マンション管理適正化法第81条第1号に該当するものであり今回の指示処分(改善措置指示)をおこないました。
同社直近の処分歴
◆令和3年12月24日元従業員による横領着服・処分 改善措置指示
尚、同社は今年5月に、米ゴールドマン・サックスが設立した公開買付会社を通じて、 MBOを行い、同社の普通株式に対する金融商品取引法及び関係法令に基づくTOB(公開買付け)を行うことを決議し、 同社株式は整理銘柄指定期間2024/8/9~9/1の後、今年9月2日に上場廃止となりました。意思決定の迅速化、事業基盤の強化、 M&A及び海外事業の拡大が目的としていますが不正防止策等のコーポレートガバナンスの強化が望まれます。
改善措置指示
令和6年3月27日
九州地方整備局は、ダックス(本社:福岡県福岡市)に勤務していた従業員が、管理を受託していたマンション管理組合から数千万円を着服したとして、同社に対し、マンション管理適正化法に基づき、再発防止などを指示する監督処分を行いました。
発表などによると、元従業員は2010年から2022年12月頃の間、県外のマンション5組合で数千万円を着服したということです。同社は従業員を解雇し、刑事告訴したということです。
(1)元従業員が2010年から2022年12月の間に、5管理組合の資金数千万円を横領着服した。(法第81条第1号)
(2)複数の管理組合で会計の収入及び支出の状況に関する書面の不実記載(法第76条及び法施行規則第97条第5項違反)
(3)複数の管理組合で管理事務報告書の不実記載(法第77条及び法施行規則第88条違反)
改善措置指示
令和6年8月20日
近畿地方整備局は、長谷工コミュニティ(本社:東京都港区)に対して(1)同社の元従業員が管理組合の財産を着服した。 (2)管理組合に対して会計報告で事実と異なる記載で会計報告を実施した。 (3)管理組合に対して管理事務報告で事実と異なる記載で事務報告を実施した。 (4)重要事項説明会の日時及び場所について掲示をしなかった。 (5)重要事項並びに説明会の日時及び場所を記載した書面を交付しなかったとして改善措置指示処分を行いました。
国土交通省ネガティブ情報等検索サイト(マンション管理業者)
上記は国交省が公表したマンション管理業者に対する行政処分ですが、事件として表に出てこないケースは想像以上にあると感じています。
門司区複合施設入札業者なく不調に終わる!
北九州市門司区に建設予定の複合公共施設の整備事業をめぐり、建設業者を決める入札の応募が1件もなく、不調に終わったことが判明しました。
市は物価の高騰などが背景にあるとみて、今後、改めて入札を行い、予定どおり令和9年度中の完成を目指す考えのようです。
門司港地域モデルプロジェクト再配置計画のなかで市は「目的と経緯」「今後の進め方について」以下の様に説明しています。*以下市ホームページより引用
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事業の目的と経緯
門司港地域に点在している公共施設(区役所、市民会館等)は、築90年を超えるものがあるなど、耐震性やバリアフリー面での対応が十分でなく、老朽化し安全面や衛生面などに課題を抱えています。
この事業は、平成27年度の「北九州市公共施設マネジメント実行計画」に基づき、約9年間の協議を経て、門司港駅に隣接した交通利便性の高い場所に、点在する公共施設を集約・複合化し、市民の皆さまの安全性・利便性の確保と地域の活性化を図るものとして進められてきました。
このような状況の中、この建設予定地で令和5年度に埋蔵文化財発掘調査を行ったところ、旧門司停車場の機関車庫の一部や石垣などの遺構(地中に残存する建造物の痕跡など)が見つかりました。
こうした中、この事業については、市議会の議決もいただき、市民の皆さまや地元の各団体への説明会などでさまざまな意見を伺いながら、一つ一つプロセスを踏んで進めております。
事業の今後の進め方
老朽化が著しい公共施設への対応は「待ったなし」の状況であり、長い歳月をかけた議論に基づき、「市民の安全安心が第一」との考えにより本事業を計画通り進めることとしています。
遺構の取り扱いと施設整備の在り方については、これまでさまざまな検討を行ってきましたが、現計画より施設の完成時期が遅れ、大幅なコスト増となるなど、市民の皆さまにさらに不便や負担を強いることが想定されます。
そのため、施設整備については、まず遺構の調査や記録保存を行った上で、今年度中(令和6年度6月補正予算として議決)に整備に着手し、令和9年度の竣工を目指すこととしています。
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令和6年度北九州市春季一般競争入札では6割以上が不調に終わる
北九州市は、門司区の門司港エリア周辺にある区役所や図書館など、老朽化している複数の公共施設を1か所に集約するため複合公共施設を建設する予定で、令和9年度中の完成を目指しています。候補物件のなかには、門司区役所庁舎のように1930年度建築もの、1957年度建築の市民会館などがあり老朽化が進み安全面、衛生面等で対応が急務だと思います。
今回の件では、同複合公共施設建設予定地で見つかった「初代門司駅」関連遺構をめぐり、地元住民等からは保存を求める声もありその影響がかなりあるとは思いますがその他に物価の高騰や技術者不足、人件費の上昇等の影響もあると考えられます。
実際に、北九州市令和6年度春季一般競争入札でも13物件の内落札は5物件のみで6割強が不調に終わっています。
北九州市都市再生推進部は「入札が不調に終わったことで、整備が遅れる可能性はあるが、令和9年度中の完成を目指したい」としています。
建設業界に於ける2024年問題など業界を取り巻く環境はより一層厳しさを増しており公共施設だけではなくマンション等民間建設工事、大規模修繕工事等にも物価の高騰や技術者不足、人件費の上昇等の影響でコスト上昇をもたらし最終的に今以上に発注者への負担増加に繋がることが懸念されます。
一般社団法人福岡県マンション管理士会主催セミナー&相談会を国際会議場で開催します。
所在地: 〒802-0001 福岡県北九州市小倉北区浅野3丁目9−30 2F
1.開催日 令和6年10月27日(日)
2.無料相談会
第1部 10時~10時50分
第2部 11時~11時50分
3.セミナープログラム
セミナー開始:13時20分 理事長 藤野雅子 挨拶
第1部:13時30分~14時30分 講 師 マンション管理士 引間金夫 テーマ 「マンション標準管理規約改正について」
第2部:14時40分~15時 講 師 北九州市 住まい支援室民間住宅担当係長 原野真由美様テーマ 「マンション管理支援制度について」
第3部:15時~15時30分 講 師 マンション管理士 山下誠吾 テーマ 「ガイドライン改正のポイント」
第4部:15時30分~15時50分 質疑応答
4.相談会(要予約) 第一部 10時~10時50分 第二部 11時~11時50分
5.参加費 無料
6.申込方法 参加をご希望の場合は、予約をお願い致します。
※FAXやメールからでもお申込みできます。
必要事項(参加者人数・参加者お名前・代表者の連絡先・セミナーもしくは相談会)を下記連絡先までお問合せください。
(一社)福岡県マンション管理士会 事務局
電話番号 092-524-9288(受付は、平日13時~16時)
FAX番号 092-402-3348
E-mail info@fukuoka-mankai.com
詳しくは(一社)福岡県マンション管理士会 事務局までお問い合わせください。
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北九州市・芦屋町・岡垣町・遠賀町・苅田町・上毛町・築上町・中間市・豊前市・水巻町・みやこ町・行橋市・吉富町・山口県下関市・山陽小野田市・宇部市
【福岡市地域】
福岡市 - 東区・博多区・中央区・南区・西区・城南区・早良区・糟屋郡・朝倉市・糸島市・大野城市・春日市・古賀市・太宰府市・筑紫野市・筑前町・那珂川町・福津市・宗像市
【大分県一部地域】
中津市・宇佐市及び周辺地区