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福岡県マンション管理士会は、無料セミナー&相談会を2024年2月11日午後1時半~、北九州市戸畑区のウェルとばた8階会議室で開きます。山下マンション管理士事務所の山下誠吾代表が講師を務めます。テーマは「認定制度、開始から1年~北九州市の場合」です。

国土交通省 第8回今後のマンション政策のあり方に関する検討会

管理会社による管理者方式の問題に関する議題

国土交通省では、増加する高経年マンションや居住者の高齢化(2つの老い)に加え、近年みられるマンションの大規模化等のマンションを取り巻く現状を踏まえて管理・修繕の適正化や再生の円滑化の観点から今後進める政策について、幅広く検討することを目的として、有識者等による検討会が設置されており現在までに8回の検討会が開催されています。

今回は、6月19日に開催された第8回検討会のなかで「管理会社よる管理者方式」についての議題がありましたので簡単にご紹介させていただきます。私は以前のブログにも記載しましたが管理会社による管理者方式については非常に問題があるとの見解です。法整備等も追いついておらず近い将来必ず問題が噴出するのではと危惧しています。
過去、管理会社に対する法整備が不十分なため様々な問題(管理費等の横領、着服、杜撰な業務等)が起こりマンション管理適正化法が制定された事実があります。その後も相変わらず絶対数は減少したものの不祥事は続いています。
国土交通省も、政官財のシステムのなかで管理会社業界に対する対応や規制も自分たちの立ち位置を踏まえた対応で私達から見れば物足りないといわれても仕方ない状況です。
但し放置して社会問題になれば自分達に批判がくることになり国民には、シグナルを出していると考えます。今回の管理会社による管理者方式は、国土交通省も近い将来問題が起きることを十分に予想したうえでの検討だと思われます。

以下、国土交通省 第8回今後のマンション政策のあり方に関する検討会から一部引用します。

3.1.3 管理組合役員の担い手不足 (6月19日開催資料)

現状

現 状
○ 近年、管理組合役員の担い手不足などを背景として、管理業務を受託している管理業者が、当該マンションの管理者として位置づけられる形式での第三者管理方式が増加している。

 ○ 国土交通省の調査によると、管理業者が管理者となる形式の第三者管理方式を実施しているケースのうち、半数程度の管理業者について、管理者としての契約を結んでおらず、また、管理業者が大規模修繕工事を受注することがあるとされている。また、多くの場合において、管理組合保管口座の通帳と印鑑を同一の社で保管している実態がある 。

 ○ 2016年のマンション標準管理規約の改正では、利益相反取引の防止に係る規定が設けられるとともに、外部専門家を活用した場合の留意点等を示したガイドラインを策定したものの、これらの措置は、管理業者が管理者となる第三者管理方式を念頭に置いていない。また、管理会社が行う管理者業務についてもマンション管理適正化法の適用があるとされているが、その旨が周知徹底されていない。

 ※ 管理者型のマンション管理が多く採られているドイツやフランスでは、管理者に関する資格制度が存在する 。 

課 題

○ 区分所有者の高齢化の進行に伴い、今後管理組合役員の担い手不足がより顕在化するおそれがある。
○ 区分所有者の責任として果たす必要がある管理組合役員の就任について、その業務内容や事務処理方法が理解できないがゆえに就任を拒む区分所有者が一定数存在する。
○ 管理業者が管理者となる形式の第三者管理について、留意点などを示したガイドラインが存在しない。

今後の施策の方向性
○ 区分所有者が果たすべき責務の周知に加え、理事等を対象にしたノウハウ集の整備やセミナーの開催を推進する。
○ 管理会社が管理者となる場合に適用されるマンション管理適正化法に係る解釈・運用について早急に明確化し周知徹底する。その上で、管理業者等が管理者となる形式の第三者管理に係る実態等の把握を進め、マンション管理業の所管部署とも連携する形で、留意事項等を示したガイドラインの整備や、監事の設置など望ましい体制整備についてマンション標準管理規約等における手当ての検討を行う。また、これらの措置の効果等を見極めつつ、管理業者が管理者となる場合の制度的措置の必要性についても検討を行う。
以上引用終わり

このように国は、国民に対してマンション管理の諸問題に対して取り組んでいますというスタンスですが一方で管理業界をあまり締め付けると管理業界(経済界)の低迷にも繋がり国としても避けたいという意向も見えます。あとは、マンション管理組合の皆様がアンテナを張りこのシグナルをキャッチし主体的に動き考えることが将来の問題を最小化できるのではないでしょうか?
しかしながらどれくらいの方がこの問題に対して関心をもつか残念ながらそんなに期待は持てないかもしれません。出来れば私の予想がはずれること期待します。

2023/7/5

マンション管理に代理人制度を創設する(案) 

前回のブログで、マンションの建て替え等の問題について政府は区分所有法改正によって大きく前進させようとしているという内容を説明しました。改正(案)主要項目のなかで異色の項目があります。それが「マンション管理に代理人制度を創設する(案)」です。
近年、海外に在住の人が、日本の不動産を取得するケースが多くなっています。これはなにも東京をはじめとした大都市圏だけではなく地方都市に於いても年々増加しているようです。ご存知の方もいると思いますが、北海道では多くの不動産が外国人によって買い占められています。日本の現在の法律等ではストップをかけることが困難な状況です。

これは分譲マンションでも同様です。そこで問題になるのが管理組合の運営です。議決権を持つ区分所有者が海外にいては、実質管理組合の運営にかかわること、議決権の行使が困難となります。また管理組合が連絡を取ろうにも、連絡先がわからないこともあるようです。このようなこ問題は年を追うごとに増加している状況です。
そこで今回の中間(案)には、海外に居住している区分所有者対象に「マンション管理の代理人制度を創設する」という案が示されています。具体的には、代理人となるべき専門家等が、海外在住の区分所有者に代わり、修繕工事など議案に於いて本人に代わり行使を行うことができるというものです。今の予定で行けば、早ければ2024年中にに区分所有法の改正となりそうです。
今回の改正(案)について日本経済新聞が記事を出していますので以下に引用しておきます。

*日本経済新聞記事『マンション管理に代理人制度 海外居住者に対応 政府、24年にも法改正 大規模修繕しやすく』より引用しています。

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政府は海外に住む分譲マンションの所有者向けに代理人による管理制度を創設する検討に入った。所有者本人が不在でも、代理人の判断で同意が得られるようにする。老朽化したマンションの増加に合わせ修繕工事の手続きを簡素にする。
法相の諮問機関である法制審議会で議論し、2024年をメドに区分所有法の改正をめざす。海外の投資家による物件保有や海外転勤が増えており、所有者が不在だったり、連絡が困難だったりする場合の手続きを求める意見があがっていた。

いまも保有者が個別に委任契約を結んで代理人を置くことはできる。代理で担える行為が法律上明確でないため、実際は海外の所有者に確認を取る場合が多い。連絡が滞り、マンション全体の管理が行き届かなくなる懸念がある。

念頭におくのが配管や配電網が老朽化し、共用部分のみの修繕では効果が出にくいケースだ。個人が所有するそれぞれの部屋にも工事を広げる必要がある。政府は法改正により代理人の判断で専有部分への立ち入りや工事をできるようにする。

海外の所有者にとっては代理人を選任することでマンション管理の手間が減る。
国内の代理人が代わりに管理費を支払えるようにする条項を加える案も検討する。
米不動産サービス大手CBREによると、2021年の日本での不動産投資額はおよそ4兆5000億円で、そのうち3割は海外投資家だった。
2022年の不動産取得額の見通しについて「昨年より増加する」と答えた海外投資家の割合は74%となっており、さらに増える可能性がある。企業の海外進出などにより一時的に国外に住む日本人も増える見込みだ。

国土交通省の調査によると、21年末時点で全国に249万戸ある築30年以上のマンションは20年後に2.4倍の588万戸になる見通しだ。マンション全体の価値を維持するためには修繕工事が必要になる。
区分所有法の改正では、部屋の所有者の所在が不明で管理に支障が出た際の対応も検討する。裁判所が代理人を選任し、弁護士やマンション管理士といった専門家が代わりに専有部分を管理できるようにする。
水漏れやごみの放置などで他の居住者の暮らしに悪影響が及ぶ事例を想定している。

以上引用終わり
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現在、区分所有法には,総会での議決権を代理人によって行うことができるなど(法39条2項)、代理人についての若干の規定がありますが代理人の行える行為についての明確な規定は置かれていません。
 現行でも、印鑑証明書を添付した委任状により代理人を選任することは実務上可能ですが区分所有法に代理人が行える行為が明確に示されていないため無用なトラブルに繋がりかねないと思われます。年々増加する外国人オーナー対策のためにも今が潮時と考え、代理制度の根拠規定を示してきたのだと思います。
 
さらに今回、所有者が所在不明の場合などの場合には裁判所が専門家を管理人として選任するという制度も検討されているようです。バブル時に建設された全国のリゾートマンション等では破格値で取引されている物件も確認されます。このようなマンションは上記の問題が顕著ではないかと考えます。
 

戦後、経済成長を優先し一時はアメリカに次ぐGDP第2位の先進国になった我が国ですが一方公害問題や環境汚染、農業の衰退と自給率の低下、世界でも有数の高齢化社会等様々な問題が表面化して対策に取り組んできました。ここにきて国際化が急速に進み新たな問題がでてきたという状況です。

2023/6/30

大幅な改正・・区分所有法改正中間(案)

国の思惑とは違い、一向に進まないマンションの建て替え等の問題について政府は区分所有法改正によって大きく前進させようとしています。

法制審議会区分所有法制部会の第9回会議が6月8日に開催されました。その席で「区分所有法制の改正に関する中間試案(案)」について審議され、同部会資料の内容を一部修正の上で中間試案をとりまとめることことし、部会長に一任されました。そして、今後、公表される修正された「区分所有法制の改正に関する中間試(案)」についての意見募集がおこなわる予定です。

国土交通省によると、築40年を超える分譲マンションは116万棟あり、20年後には425万棟に増える見通しとのことです。 現状、分譲マンションの建て替えには所有者全員の「5分の4」の賛成が決議には必要と、区分所有法で定められています。 しかし、老朽化した分譲マンションでは相続を経て部屋の所有者が不明というケースや、外部オーナーの増加、また近年は外国人オーナーの増加等で建て替えのための決議条件に必要な賛成が集まらないことが指摘されています。今回の中間試案では、所有者が分からない場合、決議の母数に含めない案のほか、建て替えに必要な賛成を「4分の3」以上に緩和する案などがまとめられています。 また、耐震性が不足しているなどの建て替えるべき理由がある場合は、さらに条件を緩和するということです。 政府は今後2カ月間にわたってパブリックコメントを実施し、来年の通常国会に法案を提出できるよう検討していく方針だということです。
以下に今回の重要なポイントを挙げてみます。

「区分所有法制の改正に関する中間試(案)」の主要な改正ポイントは以下の通りです。
<管理に関する項目>
◆修繕などの普通決議
・所有者の過半数→出席者の過半数に変更
◆構造を変える大規模改修工事
・所有者の4分の3→出席者の4分の3に引き下げる
◆海外居住者の専有部分に関すること
・法律で代理人による管理制度を創設する(法律専門職等就任を想定)

<再生に関する項目>
◆建て替え決議に関すること
・所有者の5分の4→4分の3又は3分の2に引き下げる(客観的理由に基づく)
◆全体のリノベーションに関する決議
・所有者全員→上記建て替えに関する決議と同じ要件にする
◆被災時の建て替えに関する決議
・所有者の5分の4→所有者の3分の2に引き下げ

*いずれも決議要件を現行よりも大きく緩和する方向です。

今後この法案が通れば、制定以降非常に大きな区分所有法の改正となります。
たしかに立替え、リノベーション等で決議要件が緩和されることで老朽化マンションの増加に歯止めがかかり結果的に既存マンション全体の資産価値が上がり、不動産流通の促進につながるということは言えます。しかしこの要件緩和により新たな問題(利害調整の増大、紛争事案の増加等)が発生することを懸念します。誰のための改正なのか?という事を考えた場合国の都合がそこに在ると感じるのは私だけでしょうか?

状況に応じて法律を変えることは必要だとは思いますが問題の本質は、区分所有者の管理に対する長期ビジョンの認識不足等であり法律改正だけですべてうまく行くものではないと考えています。今回の法律改正に向けても区分所有者がどれくらい認識しているかと言えばほとんど知られていない現状があります。政府も全くPR等もしておらず業界関係者が認識している程度です。今回の区分所有法改正を機会に区分所有者がもっとマンション管理に関して関心をもち「無関心」「外部全面依存」等の意識を変えることが重要だと考えます。

2023/6/24

ドローン外壁調査のメリット・デメリット

ドローンを活用した外壁赤外線調査のメリット

前回では、外壁調査に赤外線を使用したドローンの活用について国がお墨付きを与えたという説明をしました。今回は、ドローンを活用したメリットとデメリット、注意点また現在研究、開発が進んでいる壁面調査ロボットについても簡単に触れさせていただきます。

作業時間の大幅な削減が可能!

まず挙げられるのがドローンによる赤外線外壁調査では、従来の打診で調査を行うよりも、現場での作業時間を大幅に短縮できることです。物件の規模等にもよりますが、打診調査の場合、外壁全面を調査するのに半月から1ヶ月程度の期間がかかります。一方、ドローンを使えば、赤外線カメラでの撮影自体は大体1日程度で終わる場合が大半だと考えます。場合によっては天候不良でドローンを飛ばせないという事態を想定しても予備日を含めても2日程度で対応が可能です。

これが、足場をかけて打診をするとなると打診作業自体に所要期間を要し、さらには足場を解体するなどの作業も発生します。その点、ドローンを使えば前述のとおり作業時間は概ね1日程度で完了します。人数も必要最低限で済むことからフレキシブルな運営が可能です。大型物件等では周辺に警備員が必要となるケースもあると思いますが打診調査と比較すると危険性も低い方法です。

外壁へのダメージが少ない

次にドローンによる赤外線外壁調査は、壁面にダメージを与える心配が非常に少ないという事です。基本的に、壁面から離れた位置を飛行するドローンは、壁面との物理的接触が発生しないためダメージを与えることがありません。
これが、壁面打診調査の場合、場合によっては壁面の劣化が進行しており軽く撫でただけでタイルが剥がれ落ちることも想定されます。
さらには、足場をかける際には固定用のアンカーを壁面に打ち込む必要があります。この穴は、作業終了後に補修はされますが、場合によっては、その穴が原因で劣化が進むことも考えられます。

住民への精神的負担が少ない

外壁打診調査では、足場を組みますので、日当たりが悪くなったり、窓を開けづらくなったりといったプライバシーの問題が出てくることがあります。打診調査の期間居住者にとっては通常より精神的負担が増してしまいます。
しかしドローンによる調査では、外壁打診調査と比較すると大幅に精神的負担が軽減できることになります。

ドローンを活用した外壁赤外線調査のデメリット

このほかにもさまざまなメリットがありますがやはりデメリットもあります。そこで今度はデメリットについて説明いたします。

ドローンを活用した外壁赤外線調査が適さない場合がある

ドローンによる赤外線外壁調査にはさまざまなメリットがありますが、あらゆる場面で使えるというわけではありません。次のような場合では活用が難しいと思います。
前後左右や上方向に逃げ場がないような環境では物理的な危険が伴うため、ドローン飛行は向きません。
隣接するビルとの距離が概ね5m未満の場所
複数本の電線が縦横に張り巡らされているような場所
周囲に電柱が多く飛行が困難な状況の場所等といった場合が当てはまります。
このようなケースでは、ドローンを使える壁面にはドローンを使い、ドローンを使えない壁面は前回簡単に説明したロープアクセス等の手法を併用するなど柔軟な対応が必要になる場合もあります。

天候に左右されやすく雨風に弱い

ドローンはその外見からも解るように、風雨に弱いところがあります。小型軽量の特徴からプロペラが風に煽られやすく不安手になります。また先端技術の精密機械であるため雨(水気)は故障の原因になり厳禁なため取り扱いに注意を要します。

当日の気温や日照の問題がある

ドローンの使用有無に関係なく赤外線調査そのものの注意点ですが、気温や日照の影響を強く受けるということが挙げられます。
理由は、タイルと壁面の間に生じた隙間の空気がタイルが密着した部分よりも温められた状態となっているのを赤外線カメラで捉えることでタイル浮きを発見する手法だからです。
たとえば夏場の晴天で直射日光が1〜2時間当たると、壁面全体が一気に温まってしまい正確なデータを取れなくなってしまいます。
逆に冬場には、終日晴れているような日でないと壁面が温まらず、やはりデータを取れません。
このように気温や日照の影響が大変大きいため、気温変化、日照の強弱、太陽の高さなどをもとに綿密に計算し、壁面がほどよく温まるタイミングを見計らって作業を進める必要があります。私は、この問題があるため業者選定も重要になってくると思います。

法律や条例による飛行制限がある

ドローンの飛行には法律や条例による制限がある場合があります。そのためドローンを飛行させるために特別な手続きが求められたり、状況によってはドローンを飛ばせないというケースも出てくることが挙げられます。

その他、ドローンの飛行が条例で禁じられている公園に隣接したマンションでは、ドローン使用を断念せざるを得ないケースもでてくる場合もあります。ドローンによる赤外線外壁調査を行うに当たっては、航空法の規制や都市・公園の条例に配慮しつつ作業しなくてはなりません。

最後に

このようにドローンによる赤外線調査もメリットだけではなくデメリットもありますが、国土交通省が打診以外の調査方法として、ドローンによる赤外線調査であって、テストハンマーによる打診と同等以上の精度を有するものを明確化しておりこれに対応する調査であれば打診調査と同等ということを国が打ち出しているのですから大規模修繕工事の周期長期化をご検討の際は、是非ドローンを活用して12条点検と切り離すことを検討されることをお勧めします。

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参考までに外壁タイルを調査するロボットというものもあります。東急建設など大手ゼネコンや国土技術政策総合研究所、他民間企業などからも発表されています。ワイヤーで吊るすタイプや壁面に吸着することで自走するタイプといった壁面調査ロボットも研究・開発されています。
ロボットが打撃しながら集音して周波数から診断するタイプなど、調査員の能力に頼る打診法のデメリットを解消する手法であることは言えます。しかし、多くがまだ研究段階で改良の余地があること、量産化していないため高コストであること等から、現時点ではそうしたロボットを積極的に活用しているケースは少ない状況です。

2023/6/23

ドローンによる外壁調査(12条点検)について

外壁全面調査はドローンによる赤外線カメラを活用

前回大規模修繕工事を18年周期にすることになれば、「12条点検」の問題が出てくると説明しました。この「12条点検」とは、建築基準法第12条に定められる建築物の定期報告義務のことです。

大規模修繕工事の周期は前回でも説明した通り、特に法令などで定められたものはありませんが、それと同時に実施することの多い外壁の劣化調査は、建築基準法の第12条で定期報告が定められています。
竣工後10年を超えた、もしくは前回の全面打診等調査または外壁の全面修繕工事後10年を超えた次の定期報告までに、歩行者等に危害を加えるおそれのある外壁の全面打診等調査が義務づけられています。

通常3年ごとに行う特殊建築物定期調査の実施年に合わせて全面打診の調査を計画することが一般的ですが現実には予算の問題もあり大規模修繕工事の際に行うケースが多いと思われます。行政機関には、一例として「現在計画中であり○○後には実施予定」の旨の補足説明を報告書に記載して提出するという形をとっていると考えます。しかしこの手法はリスクがあり実際に外壁が落下して被害が出た場合責任問題に発展しかねません。

この前面打診が義務付けられたきっかけが実は、平成元年11月ここ北九州市の10階建住宅都市整備公団の建物屋上付近から壁が崩落し、2名が死亡1名が重症を負う痛ましい事故が発生し、その後も幾度か外壁落下事故が発生したことによります。こうした事態を受けて平成20年4月建築基準法の改正により外壁の全面打診点検が義務付けられました。

現状、外壁の全面打診等調査は、これまでは足場を組んで作業をするのが一般的でした。足場の仮設工事はそれだけで大きな時間と費用がかかることから、現実には、大規模修繕工事に必要な足場を利用して、工事の前に実施するのが一般的です。打診調査で補修が必要な箇所をマーキングし、補修を実施するという流れを考えても合理的だと思われます。このほか従来から赤外線カメラを活用した方法も取られています。

マンションから20〜30m離れた場所から手持ちの赤外線カメラで撮影するという方法です。しかし高層階になると精度が落ちるという問題があります。この赤外線カメラで精度の高いデータを得るには、壁面に対しできるだけ垂直に近い方向から撮影する必要があり、地上からの撮影ではマンションが高層階なるほど壁面に対する角度がついてしまうことで精度が落ちるのです。
望遠レンズをつけて離れて撮影すれば角度の問題は解消されますが、距離が離れることで熱エネルギーを捉えにくくなるため、やはり正しいデータを取れにくいとうのが実情です。
また天候にされやすい事や浮きや割れが認識しにくいこと、隣接する建物との距離が近い場合は撮影が困難なことなど問題がありす。

この赤外線をカバーする方法としてロープアクセスという作業員が2本のロープで身体を支えながら調査する外壁調査を併用する場合もあります。但しこのロープアクセスも対応できない作業場所があったり安全面で対策が必要であるなど課題もあります。また広範囲にわたり打診する場合は仮設足場での作業より費用が高くなる可能性もあります。

この問題点を解消できるのが近年話題のドローンを活用した赤外線カメラによる調査です。
ドローンに赤外線カメラを取り付け調査を行うことで、赤外線データを取れる範囲内の距離、壁面に対し垂直方向に近い位置を保ちながら撮影できます。
理想的なポジションから撮影することで従来の問題点を解消し高精度なデータを得られます。
ドローンは足場を必要とせず、ロープやゴンドラと比べても低コストです。

国の重点施策に沿うドローンを活用した赤外線調査

実は、日本政府の成長戦略会議において、実行計画の項目の一つとしてドローンの活用が以下のように明記されています。

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第2章 新たな成長の原動力となるデジタル化への集中投資・実装とその環境整備
5.デジタル技術を踏まえた規制の再検討
(3)建築分野
 外壁調査を行う赤外線装置を搭載したドローンについて、残された課題の検証を本年度に行う。一級建築士等による打診調査と同等以上の精度を確認の上、制度改正を行い、来年度以降、建築物の定期検査における外壁調査で使用可能とする。
2021年6月18日 成長戦略実行計画 内閣官房
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この計画を受け、翌年2022年、国土交通省から発表があり、いわゆる12条点検における外壁の全面打診を規定した国土交通省告示第282号の一部を改正して、打診以外の調査方法として、ドローンによる赤外線調査であって、テストハンマーによる打診と同等以上の精度を有するものを明確化しました。適正な調査であれば打診調査と同等ということを国が打ち出しているのです。
調査手法として国のお墨付きがあり、国の政策にも沿うドローンの活用は今注目を浴びていると言えるのです。

大規模修繕工事を18年周期にすることで12条点検の問題点であった費用の問題がこのドローンを活用した赤外線調査で軽減でき且つ精度についても国が認めてくれるのであれば今後検討をしていく管理組合も増加すると考えます。

今回はここまでで終わりにさせていただき次回は、ドローンを活用したメリットとデメリット、注意点また現在研究、開発が進んでいる壁面調査ロボットについても簡単に触れさせていただきます。

2023/6/18

大規模修繕工事の18年周期について

わずか15年前に示された大規模修繕工事の12年周期

日本のマンションマネジメントの歴史は非常に短いものです。マンション管理の基本法の区分所有法が制定されたのが1962年です。高度経済成長を迎えマンションが大量供給され始めたのが1960~70年代です。当初は、建設ありきの時代で将来の大規模修繕工事のことなど想定する習慣などなかったことは、想像に難くありません。

そのつけはやがてきました。2000年前後には築30年を超えるマンションが「一度も大規模修繕工事を実施しておらず、工事をする修繕積立金もない」といった問題が頻発してしまいました。1986年にマンション管理センターから「マンションの修繕積立金算出マニュアル」が公表されその後、1993年に(株)リクルートコスモスが長期修繕計画に基づく修繕積立金を算定し販売してはいたものの1997年の標準管理規約の改正で初めて「長期修繕計画」という言葉が登場し、その作成が管理組合の業務の一つであると示されましたが、当然作成に関するノウハウもなく、内容・精度も客観性に欠けており、現実に全く則してないような計画も多々あったようです。
そこで、国土交通省が検討委員会を立ち上げ、2008年に公表したのが「長期修繕計画標準様式」とその「作成ガイドライン」です。この資料の中で、大規模修繕工事の周期の例示として12年程度という数字が使われたのが12年周期のはじまりです。わずか15年前に今のスタイルが始まったのです。いかにマネジメントというものの認識が低かったかが解ると思います。
「我が国」にこのコンクリートの区分所有住宅というスタイルが本当に国民性に於いて合っているのかということを考えさせます。

それ以降、新築マンションの長期修繕計画が版を押したように国土交通省のガイドラインに沿った設定となり、12年周期が世の中に定着したというわけです。マンション管理に関する問題は、市場経済を優先することで問題が起きれば後追いで対応策を取るという図式です。我が国のマンション管理の歴史はまだ1サイクルも経験していないのですから。デベロッパー側としても、国土交通省の方向性に沿うことで、リスクヘッジを考えこの長期修繕計画標準様式に素直に準拠して計画を初期設定してきたのが現在の12年周期の定着だと思います。

ガイドラインが公表された2008年以来、初めて改訂がなされたのが2021年です。その間に部材・建材の品質・耐久性能はかなり向上してきています。2021年の長期修繕計画標準様式の改訂で、ようやくこの「12年程度」が「12~15年程度」に伸びました。それでも15年です。これを18年まで伸ばせることは可能なのでしょうか?

大規模修繕工事を18年周期にする対応と実例

一般的なマンションの修繕サイクルは12年〜15年程度ですが、修繕周期を伸ばす高耐久化を目的とした仕様にすれば15〜18年に引き伸ばすことが可能です。昨今のマンションが抱える老朽化問題にともなって、各材料メーカーや工事会社等では期待耐用年数の長い製品の開発・研究に取り組んでいます。

一例として外壁塗装材はフッ素樹脂系塗料を使えば15年~20年位耐用します。シーリング材は表面を塗装してやるかシリル化アクリレート系シーリングであれば塗装無しでも18年位耐用するとされています。防水材については、屋根防水等は従来から適切に施工をすれば20~25年位耐用します(適時、部分補修や保護塗装の塗替えは必要になります)。また、バルコニー床等のウレタン塗膜の簡易防水も保護塗装をフッ素樹脂系を使用し、適切な塗膜厚を確保すれば18年位耐用します。

実例としては、UR都市機構があります。現在約1万5000棟のマンションを数十年も維持管理を続け、毎年何百件もの大規模修繕工事を実施していますので、そのノウハウと経験知は日本一であることは間違いないと考えます。そのUR都市機構が策定した修繕等実施基準の中で、これまでの実績をもとに、大規模修繕工事の周期を「18年」と定めています。私も短い期間でしたがUR団地再生支援業務の件で担当者等の方と話す機会がありましたがやはりその経験知は半端ではないと感じたことを覚えています。

また、マンション管理業界大手のの東急コミュニティーも、指定した仕様・工法を前提に、防水などの保証期間を従来よりも長期にするとともに、次回の大規模修繕工事の計画を最長18年後とする提案を開始しています。

さらには、野村不動産グループの管理会社である野村不動産パートナーズが自社基準での責任施工することを前提に16~18年周期の大規模修繕計画を提案し始めています。

もちろんすべてのマンションが18年周期で対応できるわけではありません。外壁がタイルの場合は浮きや剥落の問題がありますし高耐久化仕様にすればコストがかかります。そのあたりのバランス感覚も必要ですし信頼できる建設会社の選定も重要です。現実的には定期的なな小修繕・中修繕を実施しながら延長化を検討するケースがまだまだ多いのかも知れません。
しかし必要性も無いのに12年周期ごとに慣習だからといって実施することに正当性や合理性は一切ありませんし、マンションの住民にとっても経済的な面で負担を強いることになります。

重要なことは、大規模修繕周期を考える前提として、「そもそも現状、大規模工事が必要なのか?」を正しく判断することが重要です。このような調査を「劣化診断」と言いますが、施工会社や管理会社に依頼すると、どうしても大規模修繕工事の実施ありきの結果になりがちです。このような場合は、管理組合側の視点にたつ専門家に依頼することをおすすめします。

大規模修繕工事を18年周期とドローンの活用

最後に、大規模修繕工事を18年周期にしようとすると、外壁の全面打診等調査の周期(12年程度)とは合わないので、それらを切り離して別々に実施しなければなりません。
しかし、外壁の全面打診等調査のためだけに足場を組めば、修繕周期の長期化による費用削減効果を打ち消してしまうので、結局周期の長期化を断念するという事がおこります。今まではこの問題に対して効果的な対応がなかったのですが最近事情が変わりました。
それは政府の政策にも沿う「ドローン」の活用です。このドローンの活用については次回説明したいと思います。

2023/6/11
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