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大和ハウス工業が設計・施工した商業施設が沈下、耐震性に重大懸念
2015年10月に発覚した横浜のマンション「パークシティLaLa横浜」の杭施工データ改ざん事件。同じく横浜市内の「パークスクエア三ツ沢公園」では杭施工データ偽装とされる傾斜が発覚。どちらも建て替えという結論になりまだ記憶に新しいなか今度は、大和ハウス工業が設計・施工して2023年5月に開業した静岡県掛川市内の商業施設「ミソラタウン掛川」で地盤が最大14cm沈下し、今年11月7日から施設の使用停止を余儀なくされている事態になっています。大和ハウス工業の調査では、現時点で5本の基礎杭が支持地盤に到達していないことが明らかになったとしていますが今後の調査でさらに増える恐れがあります。建築主のフジ都市開発(静岡市)は調査後の建物解体や建て替え、大和ハウス工業への賠償請求を検討しているということです。
商業施設「ミソラタウン掛川」はフジ都市開発が総事業費約30億円を投じ、23年5月に開業。A~Dの4棟から成り今回の問題はA棟で発覚したということです。A棟の基礎杭は7~12mで計72本あり大和ハウス工業は今年11月までに9本を調査。このうちの5本が支持層に2~8m到達していないことが判明したということです。同社は、未達が判明した杭の周囲にある5本も支持層に到達していない恐れがあると見ており同社は杭の調査を25年1月ごろまでに終える予定だということです。
異常がなかったB~D棟では通常通り営業を続けるが、A棟に入居していたスーパーやドラッグストアなどのテナント3者は休業・閉店を余儀なくされた。フジ都市開発とテナントとして入居する遠鉄ストア(浜松市)は、大和ハウス工業に対する損害賠償請求を検討しているということです。横浜の件で大きな社会問題になり建設業界も危機感をもって再発防止に取り組んでいると思われた中での今回の問題発覚です。
各業界大手企業で続く基礎杭偽装問題と免振ゴム偽装問題
2015年10月に発覚した「パークシティLaLa横浜」は事業主(デベロッパー)が三井不動産と明豊エンタープライズ、設計・施工は三井住友建設。「パークスクエア三ツ沢公園」は事業主が住友不動産、設計・施工は熊谷組。日本を代表する大手企業が名を連ねています。問題の杭は、旭化成建材が施工したDYNAWING工法の杭であり建設時に必要な地盤調査の一部をせずに別のデータを転用するなどして基礎工事を行い問題が発生した。横浜のマンションでのデータ偽装が発覚した後、旭化成建材は杭工事をした45都道府県の3040件について、施工報告書を調べて、約300件で杭のデータ偽装の疑いがあり、50人近くの現場責任者の関与が判明しました。
このような国内有数の大手デベロッパーやゼネコンが手掛けているにもかかわらず、偽装が防げず大きな社会問題になり、今回、再び国内有数の大手住宅総合企業である大和ハウス工業が設計・施工した建築物で問題が発生しました。「大手だから安心」という本質的な答えにならない漠然とした理由で信用することが実は非常に不確かな脆いものであることが改めて浮き彫りになりました。
今回の事件とは別に福岡の賃貸タワーマンション「カスタリア大濠ベイタワー」(地上30階、高さ97.67m)では2015年に東洋ゴム工業(現TOYO TIRE)によって検査データ偽装された免震ゴムが使用されていたことが発覚しその影響で現在解体中になっています。まだ築15年という物件での解体となりました。この件についてはTOYO TIREが免震偽装の責任を取って自らマンションを買い取るという異例のケースで終結しました。売り主は大和ハウスリート投資法人。
基礎杭問題が起きる要因と建設業界の問題点について
杭は構造物をささえる土台であり、この土台が揺らげば、その上の構造物は本来の機能を発揮することはできないことは誰が考えてもわかることです。
杭は地中に設置されるため、施工の品質を目で確認する事ができず、施工記録が品質確認のほとんど唯一の手段であるというのが実情です。この記録が改ざん・流用されてしまえば、元請ゼネコンの現場担当者では杭の工事業者から提出された施工記録から改ざん・流用を見つけ出すことは困難であると言われています。日本の地質は世界一複雑であるといわれます。基礎地盤の複雑さや場所による変化の激しさも同様であり、大きな構造物をつくる場合は、地質調査が義務付けられ、そのデータにより地質断面を想定し、杭基礎の場合は先端を設置する支持層を決定します。目に見えない地中のため支持層の想定深さと実際の深さに相当の誤差が生じることは避けられず想定する誤差量を大きく設定すれば、杭長は長くなり、原価上昇に直結します。経済性を考えれば、ぎりぎりの設計になりがちで、継杭などの設計変更せざるを得ないケースが生じてしまうリスクが内在しており不確定要素の大きい業務だということです。
建設業界はこれまでの価格競争と重層下請制度に加え近年は事業者側から一段と厳しいコスト削減と工期短縮の要求が付け加えられています。さらに、材料費の高騰に加え2024年4月からは改正労働基準法の施行で労働時間の規制強化等業界を取り巻く環境は厳しさを増しています。
建設現場では従来、人的な関係を含めた信頼関係と職人としてのプライドが品質を維持してきたものの近年の価格重視の下請け依存に傾斜した結果、丁寧な作業を心掛けようという意識が生まれにくくなる環境が出来上がってきています。
さらに厳しい工期厳守が要求されることが常で、建設工事の全工種にわたって、相当なプレッシャーになっています。特に先述した様に不確定要素の大きい地中を相手にする杭工事については、十分な地質データが求められるにもかかわらず、その調査さえ省略されている実態がおきているということです。仮に想定外の事が発生すれば場合によっては元請や発注者との変更協議が必要となるなど、工期が遅れ予算オーバーが発生します。工期遅延はペナルティーの対象になることもあることから余裕のない状態での杭施工が行われ今回のような問題が発生することになります。
単に建設業の偽装問題ではなく金融資本主義の歪が表面化している!
このように外から見えない「基礎工事」は施工にあたる場合、工程管理を徹底することが重要だと言えます。請負施工業者社員が直接作業を行うにしろ外注する場合にしろ、必ず管理技術者が現場に常駐し、施工記録を取ること。材料の搬入から施工記録の確認まで、工事の可視化に努め記録の保存を徹底することが重要であると考えます。先述した様に支持層の想定深さと実際の深さに相当の誤差が生じることは避けられないことを理解したうえで支持層の確認は埋設時の施工記録を確実にとることを徹底することが重要だと考えます。
一方建設業に従事する労働者の高齢化と減少も深刻であり実際に建設労働者の減少には歯止めがかからず特に建設業は他産業と比べて高齢化が進んでおり全就業者数の中で55歳以上の就業者の占める割合は、全産業平均の31.5%に対して建設業は35.9%。29歳以下の就業者の占める割合は、全産業平均の16.4%に対して建設業は11.7%(日建連 建設業デジタルハンドブック)。現在の状況が続くようであれば、人手不足はますます深刻化することになります。
こうした状況のなか、2024年4月からは改正労働基準法の施行で、時間外労働の上限規制の適用が始まり労働時間圧縮のしわ寄せが、施工品質に及ぶリスクが懸念されています。
政府はこうした事態をうけ人手不足を補うために外国人労働者の受け入れを拡大する方向で進めていますが経験の浅い職人を集めても、問題の本質である多重下請け構造や工期短縮の問題、労働者の処遇改善及び施工不良を防ぐための教育や意識が各現場で行き届いていなければ、根本的な解決にはならないと思われます。
こうした問題が発生する度に思うのは日本の経済システムは原点に戻り再構築する時期に来ているのではないかと感じています。少しでも安く、少しでも早く、ということが前面に出て、土台の安全という、品質上の最大要素を軽視してまで営利を追求しなければいけない構造は正常ではありません。行き過ぎた金融資本主義の拡大がこうした背景を生む土壌になっているのではないかと思います。
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