季節柄、決算理事会・総会を迎える管理組合様も多くあると思います。そこで今回は、ある事例を作りそれを基に少しお話ししたいと思います。尚、以下の内容は、すべての管理組合様に当てはまるものではありません。
国土交通省が公表している標準的な委託契約に基づき管理委託契約を行っている管理会社も多くあります。ただ現実このような問題のある管理組合は、想定するよりは多いのではないかと考えます。
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中規模マンションで、輪番制で2回目の理事になったBさんは自身が総務関係の仕事をしていることもあり会計担当理事になりました。管理会社に会計処理のやり方などを確認したところ、会社経理とはずいぶん違う方法で処理されており、支払いの証拠となる請求書等も外注先のものではなく管理会社発行の伝票がほとんどという状態でした。
これでは適正な会計チェックなどできないと管理会社に言ったところ、「当社はこのやり方で長年やっており問題は生じておりません」という回答でした。その他気になる点として通帳名義と印鑑を確認すると、管理費口座・修繕積立金口座共に通帳はたしかに理事長名義になっていましたが管理費口座の印鑑は管理会社が持っている状態で、管理会社の裁量で支払いが可能な状況でした。
そこで過去の領収書綴りなど決算書類を精査したところ腑に落ちない支払いレシート・領収書が複数確認されました。他にも社会人感覚でみると随分割高な点検費用・修繕工事の請求書も目につきました。
この状況に、自分も含めすべて管理会社任せで組合員全員が無関心だったのではと思いました。幸いBさんは、会計や総務に詳しいこともあり、組合員に不動産関係者がいたこともあり管理組合を適正化するため協力してもらえませんかと、他の役員に呼びかけました。
そこで管理委託契約の中身について標準管理委託契約書を比較してみることにしました。すると明らかに管理会社に有利な内容になっている項目を複数確認することができました。以下一例として・・・
・管理注意義務を明記している条文が見当たらない(第5条) ・費用の事前承認、収支報告の内容が管理会社にとって都合の良い内容になっている(第7、8条) ・契約の解除、有効期限、更新等について標準委託契約書と比較して管理会社に有利な内容になっている(第18~21条)など複数の問題があることがわかりました。
さらに基幹事務以外の大半が再委託されておりBさんが想像していた以上のマージンが乗せられていることが判明しました。Bさんは標準管理委託契約書と今の契約書の比較表を作成して理事会のメンバーに相談して契約内容変更について管理会社と交渉することにしました。
何度か協議した結果、管理会社は、総会にて承認されれば要望通り契約内容を変更するとの意思を示しその後、無事承認され管理組合にとって不利な契約内容が是正されました。結局その2年後、管理組合は、その管理会社を解約して今の管理会社に変更して現在に至っています。
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このように管理委託契約の問題は、発見されるまで問題の存在が気づかれないという特徴があります。よく「うちの子に限って」というフレーズを聞くことがあります。まさかうちの子が!と。これと同じことが管理組合にも言えるのではと考えます。
いやむしろ「うちの子」より危険だと感じます。ほとんどの方が管理委託契約の内容に関心が無いのですから。外部のチエックも働かない管理組合であれば尚更です。うちの子の様に同級生の親、学校等から情報がもたらされる事もありません。
長年気づかず管理費・積立金が値上げされいつまでたってもお金が貯まらない管理組合になるかもしれません。
我が国は、「契約自由の原則」というものがあり誰とどんな内容で契約するか協議しどのような方式で結ぶか結ばないか個人の意思を尊重する社会になっています。
しかし竣工から販売が開始され設立総会が開催されるまでの段階で実質管理会社が決まっており契約内容について組合員の方が協議することはありません。そのため契約内容について、よく理解しないまま更新を続けることはよくあることなのです。
今回の例のように管理委託契約に問題があると感じたら、標準管理委託契約書との比較表をつくってみるとよいでしょう。それと並行して現在の管理委託契約書の内容が誠実に履行されているか確認してみてください。
そのうえでたたき台を作成して、管理組合が希望する委託内容を整理して、契約の変更について交渉するかどうかを理事会等で話し合ってみるとよいでしょう。このまま管理組合にとって不利な契約内容を続けることは不適正な状態で管理組合運営を遂行することになります。
少しでも今の契約内容について疑問等あればまずは管理委託契約の中身について確認してみることをお勧めします。
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